帰国後 Ayako は、旅行で知り合ったセラピストの仕事場を訪ねることになりました。そこは、カウンセリングや企業向けの研修を行っている会社でした。
“私、これからどうしたいんだろう?”
会社を辞めることにしたものの、先のことが何も決まっていなかったAyakoは、そこでカウンセリングを受けることにしました。自分が心の底では何を望んでいるか、これからどうしていきたいのか、その答えを自分の中から見つけ出そうとしていたのです。
そして、その経過の中で、Ayakoはなんとそのオフィスで、アロマの講座をやることに話が決まったのです。まったく未知の世界だったけれども、Ayakoはわくわくする気持ちとほっとする気持ち、そして少しの不安を抱えながら、その後3年近く、そのオフィスでさまざまな講座を開催することになりました。
その事務所では、講座の企画、集客、開催、チラシ作りや広告まで、各講師にまかされていました。独創的なアイデアや講座は歓迎され、各講師は集客できるもできないも自分の責任、結局個人で活動している講師がひとつの場所を借りて集まっているような形で、各自自由に、オリジナリティあふれる講座を開催していました。
Ayako はアロマ講座を開催することになったものの、最初は企画倒れに終わったり、なかなかお客さんが集まりませんでした。そうして毎日自由な時間には、アロマを使いながら香りの探求にいそしんだり、オフィスで講師仲間と共に、“自分を知る”さまざまな研修を行いました。
研修といっても堅苦しいものではなくて、ホワイトボードを使いながら身近な日常の出来事を採りあげて、自分で気づかなかった無意識の行動や思考パターンを掘り下げ、実感していくようなことでした。他のメンバーと比較していくと、ほんとうに一人一人違うんだな〜と実感でき、人にはいろいろな個性があることがわかったり、また自分の個性を自覚したりすることになりました。
こういったことをまったく考えもせず過ごしてきたAyakoには、それはとても新鮮な体験で、興味深いものでした。
そして、毎日香りを使う中で、自分のスタイル、自分のアロマの形を探していました。
アロマヒーリング
ある日、Ayako は知人に、一冊のアロマの本のことを教えてもらいました。
「もう読みましたか?『聖なる香り』、とても良かったですよ。」
なにかピンとくるものがあり、翌日すぐに、本屋さんに買いにいきました。
その本は、精油の一般的作用に加えて、人間の精神への働きと、精油を使ったオーラ(人の体をとりまく、その人特有のエネルギー)のヒーリングの方法が書いてありました。
“そうそう、私が知りたかったのはこれだ…!”
Ayako はそれまで香りを使っていく中で、Ayako は何とか「聖なる香り」を書いた人にアロマのことを習いたいと思い、問い合わせをしたのですが、残念ながら、今のところはそのようなセミナーをやる予定はないとのことでした。
ところが、それから一ケ月くらいたった頃でしょうか。一通の封書が舞い込みました。
「アロマヒーリングセミナーのお知らせ」
なんと、「聖なる香り」を翻訳した人が、セミナーを開催するとのこと。
“やった!”
本当に、ことアロマに関しては、強運とも言えるのかもしれません。
アロマヒーリングのセミナーが始まりました。ほとんどの受講生が、既に香りの勉強をしている人たちだったり、既に仕事にしている人もいました。
最初の授業のとき、ピンク色のハガキ大の紙が渡されました。
「自分の一番のお願いを書いてください。なるべく志しの高いものをね。」
先生がみんなに言いました。
「ひとつでないとだめなんですか?」Ayako は少し考え、2つのお願いをひとつにまとめることにしました。
「パートナーと共に歩みつつ、人々に夢と愛と楽しさを伝える、セラピストになる」
と書きました。
自分のお願いが集約されたその文章を、なかなか気に入ってしまい、何度も読んでは、嬉しくなってしまうのでした。
先生が、
「それでは目をつぶって。今書いたみなさんのお願いが、かなえられた姿を想像してみましょう。」
と言いました。
Ayako は目をつぶりました。部屋には、心地良い精油の香りが漂っていました。
ふと、目の前にある光景が広がってきました。それは、何人かの人を前に、Ayako が香りを使いながら講座を開いている光景でした。本当にみんなが気持ちよく楽しんでいることが感じられる、素敵な光景でした。
“このビジョンが現実になるんだ…。”
歓びの気持ちでいっぱいになりました。
香りを愛してる?
アロマヒーリングセミナーの後、ようやく仕事の予約が入るようになってきました。
この頃はまだ、個人レッスンだったり、少人数の講座だったりしたので、毎回おひとりずつ、自分の香りを選んでもらっていました。不思議なことに、お客様はアロマの知識が全くなくても、
「直感で気になる瓶を選んでもらえますか?」
と聞くと、
「う〜ん、、、じゃぁ、これ」
念のため、フタを空けて香りをかいでもらうと、大体の方が、
「いい香り!」
と答えるのです。
念のため他の瓶もかいでもらいますが、やはり1本目に選んだものが一番いいようでした。
”人って、香りの知識がなくても自分の香りは直感で選べるんだ。”
この頃、Ayako のところにくるお客さまが選ぶ香りは、ローズばかりでした。ローズは優しく、包みこむような愛情を感じさせてくれる、女性的な香りです。ローズの香りをかいでいると、肩肘張らず、自然体でいけばいいんだな〜と思わせてくれます。
ある日お客さまに、
「Ayaさんて、香りのこと愛してるんですね。その気持ちが、こちらまで伝わってきました」
と言われたことがありました。
Ayakoは思わず、精油のことを
「この子たち…。」
と言ってしまっていたのです。
“私って、香りを愛してる…?”
なぜだか嬉しくなってきました。そして、
“私が香りを使うと、お客さまにはその気持ちを伝えられるのかな…。”
そう思うと、ますます嬉しくなりました。
久しぶりのアロマ・バス
さてこの頃、Ayakoは失恋をしました。さびしい思いを抱えながら、久しぶりにアロマ・バスに入ってみよう、と思いました。
“そういえばこの頃ずっと入っていなかったっけ…。”
そう思いながら、精油箱を開けてふと手にとったのは、ベルガモットの精油でした。―アールグレイの紅茶の香りづけにも使われるベルガモット。心にたまったものを、引き出して、優しく溶かしてくれる精油でもあります。
お湯の入ったバスタブに、ベルガモットを五滴、たらしました。一瞬にして、さわやかで優しくて、そしてちょっぴりせつない香りが、広がっていました。そして、Ayako の心にたまった何かを、つついていました。
…いつしか涙が、あふれ出てきました。そして…、びっくりしたことにそれは、鳴咽のようになっていました。こんな風に泣いたのは、父が亡くなったとき以来のことかもしれません。
翌朝目覚めると、それはそれは不思議なくらい、すっきりしていました。
オフィスで働くことになりました